単行本が完成して書店に並んでいる今となっても、この作品が実際どういうプロセスでできていったのかがよくわからなくなることがあります。作っている最中も、最終的にどんなかたちになるのかは全然見えていなかったし、また、見えないことや、わからないこと自体がこの作品をかたち作ったようにも思えます。わからないことをわかろうという過程が一つの作品になったのかもしれません。いずれにせよ、ひとつのパッケージとなった上でも、まだこの作品は終わっておらず、拡散し、変化を続けて行くような気がします。
このブログを書き始めた個人的な最初の動機は、作品の性格上、制作過程を公開するのも面白いかもとか、とにかく作品本編に入る以前のotehrの部分がおそろしく多い作品だから、それをちょっとだけお蔵出ししようとか、あとちょっと宣伝とか、そんなちょっとした打算も見え隠れするようなものだったんです。ただ、途中からこの作品がどういったプロセスでかたちになって行ったのかを自分自身で確認し直す場となって行ったように思います。
作品は完成しましたが、逆に今だからこそ、作者である自分にとっても、あるいはもう一度この作品がどんなものだったのかを俯瞰する必要があるのかもしれません。そんなわけで、もう少しここの更新を続けます
というわけで、一昨年の大晦日以来、実質的な更新が滞っていましたが、以下が以前公開した春篇の続編である夏篇の絵コンテです。
春篇のものとは違い、色がついています(Photoshopで彩色)。というのも、このコンテは完成版の絵柄のエスキスも兼ねて制作したものだからです。ただ、絵柄も連載時春篇のものとはだいぶ違うし(単行本版とも全然違う)、なんだこれ、という感じですが、要は、ここでも度々こぼしているように、当時、この作品の絵柄についてかなり迷っていたんですよね。最終的に夏篇は、このエスキスを下絵にして、リキテックス(アクリル絵具)でフィニッシュしました。
第一回の春篇を見切り発車ながら力技でかたちにして、当然ですけど、それまで見えていなかったこの作品のコアな部分がかなり明るみになったんです。そしたら、連載時春篇でやった絵柄も悪くはないんだろうけど、ちょっと違うぞ、と思うようになってきたんです。
普通、連載って最初に打ち出したものをなんとかかんとかやりくりして行くものなんだと思うんですけど、明らかに違うと思うものを継続して行っても、たぶん誰も幸せにはなれない。もともと、これと言った打ち合わせもなくはじまって、作品は連載しながらどうして行くか模索して行きましょうというコンセンサスだったし。それで編集の太田さんに話したんですけど、「いいんじゃないすか、毎回新連載で」と返事をくれて、柴崎さんも逆に面白がってくれて。
最初はこうして途中で絵柄をかえることってプロとしてはどうなのかしら、という部分もあったんですけど、この作品の場合は、まあそれもふくめて「途中で」なのかな、と思うようになって、それから毎回、イレギュラーなことも含めて、可能な限りこの作品のためになることは作品内につぎ込んで行ったんですけど、今にして思うと、それは非常に良い選択だったなと思います。
夏編の絵柄がリキテックスの厚塗りのみで鉛筆の線がないのは(あと黒がないのも)、絵柄の雰囲気と文字乗りの良さを両立させたかったからです。夏編の絵柄は単行本には採用しませんでしたが、これはこれでひとつの『いつか〜』の可能性なんだなと、今でも結構気に入っています。
